去る10月5日に第六回食材塾が行われました。今回は題材として“食鳥”を取り上げました。講師には学校給食用物資の納入業者でもある
株式会社鳥勝の代表取締役社長の齋藤武彦氏をお迎えしました。齋藤氏は神奈川県食鳥肉販売業生活衛生同業組合の理事長も務めていらっしゃいます。
当日は株式会社鳥勝を見学させて頂きました。ここでは丸(まる)と体(たい)の処理をしていますので、その作業の様子を説明を加えていただきながら見ることが出来ました。
また、学校給食用の鶏肉としてパックで入ってくるものは、産地で機械を使ってさばいており、手作業で行ったものとは違いがあることもお話いただきました。
作業場の温度は10°C以下に保つように設定されており、その中での長時間作業の苦労が伺えました。見学の後、南部市場内の会議室に移動し、齋藤氏から
食鳥についてのお話を伺いました。これからの日常業務に生かすことのできるお話を聞くことが出来、とても有意義な時間となりました。
工場に入荷した丸(まる)と体(たい)
作業は分業制で、それぞれの部位に分ける。
と体から手作業で処理したもも肉
産地で機械処理してパック詰めされたもも肉学校給食用
講師
株式会社 鳥勝
代表取締役社長
神奈川県食鳥肉販売業生活衛生同業組合
理事長
齋藤 武彦 様
鶏は卵からひよこになるまでに21日間、ひよこから若鶏になるまで50日間、71日間という短い期間で食用の鶏肉となります。
豚肉や牛肉に比べ、人間にとってのたんぱく源となるまでが非常に短い期間であることがまず良い点です。
また、鶏1kgの肉を作るのに、必要なえさは約2kgです。一方、豚肉1kgを得るためには4kgのえさが必要で、牛肉に至っては10kgのえさで1kgの肉になります。
この資源の少ない日本において、期間も短く、えさも少量で食用となる鶏肉は貴重なたんぱく源です。日本では2012年に豚肉を抜いて、
肉類の中で鶏肉が一番食べられています。
鶏肉は菌が心配、食中毒が心配、という声を良く聞きます。事実、鶏自体がもっているサルモネラ菌やカンピロバクターなどの菌の保菌率は7割です。
これはもともと鶏がもっている菌なので、無くすことは出来ません。鶏肉を扱う業者はこのことは十分に分かっていますので、
衛生管理をしっかりとして「もっている菌を増やさない、これ以上菌をつけない」ということを徹底して行っています。工場内も10°C以下に保っていますが、
これもその一つです。また、これら鶏肉が保菌している菌は加熱により死滅しますので、十分な加熱処理を行えば食中毒の心配はありません。
鶏肉によって食中毒をおこすのは、加熱処理がなされていない場合です。ささみなどは筋繊維が多いので菌が繊維の中まで入り込んでおり、
表面を霜降り(さっと熱湯に通し、表面を白くして霜がおりたような状態にすること)にしただけでは、中の菌は死滅しません。これにより食中毒をおこすのです。
ここさえ気をつければ、季節によっても鶏肉の使用を制限することはないと思われます。また、腸管出血性大腸菌(O抗原)は鶏肉には存在しません。
鶏の体温が39°C前後と高いので、鶏の体内で菌が生きられないからです。
現在日本では年間6億5千万羽の鶏が食用に処理されています。この全て、1羽たりとも漏れず、行政による検査を通らなければ、市場に出ることはありません。
この「食鳥検査制度」は平成4年から行われています。検査は、まず、鶏が生きている状態で病気がないかなどを調べます。
次に、羽を取った後にうっ血などの後がないか、皮膚に「がん」がないかなどの検査があり、最後に内臓に病巣がないかの検査があります。
この検査制度により、鶏肉の安心・安全が守られています。
渡り鳥には、1 万キロを飛び続けた記録もあります。これは、鶏むね肉やささみなどの筋肉に多く含まれる抗疲労成分である「イミダペプチド」という
ペプチド(2つのアミノ酸がつながったもの)が、疲労の原因となる活性酸素を除去し、細胞の機能低下を抑えて疲労を軽減するからだそうです。
横浜市は体力テストでも全国の上位ですが、この「イミダペプチド」を豚肉の3~5倍も含む鶏むね肉やささみを学校給食で積極的に食べて、
体力テストの全国1位を目指して下さい。
最後に講師の齋藤氏から、「このように、エコで、安全で、栄養価も高い鶏肉をもっともっと学校給食のメニューに取り入れてほしい」とのお話がありました。